母が見つけた、娘の中の“宝物”
ーわたしたちのサステナブルー
この度ヤマダヤは、知的障害があるアール・ブリュット作家臼井祥子さんとのご縁を頂き、「アート×アパレル」という形でコラボレーションに取り組むことになりました。本ブログでは臼井祥子さんやご家族との出会いを通して私たち自身が感じたことや学んだことをお伝えするとともに、自閉症や障害がある方々への理解を深めるきっかけになればと願っています。
アール・ブリュットとは
「アール・ブリュット(Art Brut)」とは、フランス語で「生の芸術」を意味し、正規の美術教育を受けていない人が、既存の芸術の枠にとらわれずに、自身の内面から湧き上がる衝動のままに表現した芸術を指します。 日本では「障害者アート」として紹介されることも多く現在注目が集まっています。
アール・ブリュット作家
臼井祥子さんとの出会い
2025年6月、一般社団法人ワンダーハートを通じて臼井祥子さんとそのご家族と出会いました。正直、私は40年近く生きてきて知的障害がある方々と接するのは初めてで、自閉症という言葉は聞いたことがあってもその意味すら深く理解できていなかったと感じます。今回臼井さんのご家族と出会い、率直なお話を伺う中で知識としてではなく「生活の中のリアル」として多くの事を教えていただきました。

アール・ブリュット作家 臼井祥子さん
母の心が織りなす絆
祥子さんは、自閉症で重度の知的障害という特性があります。 感情の表現はできますが、言葉でのコミュニケーションは難しく、日常生活にもさまざまなサポートが必要です。そんな祥子さんの才能に最初に気づいたのは保育園の保育士さんでした。 レゴブロックで遊んでいる祥子さんを見た保育士さんが、その色彩選びやブロックの積み方への強いこだわりから「他の子とは違う才能がある」と気が付き、その出来事をキッカケにお母さんと祥子さんは二人三脚でアート作家への道を切り開いてきました。
とはいえ、当時は絵画教室に通いたくても障害がある子を受け入れてくれる教室は少なく、お母さんは何度も断られ大変苦労されたそうです。
そんな中、「芸術バクハツ教室」という絵画教室が祥子さんを受け入れてくれ、祥子さんのアートの才能が開花していきます。 卵のパックやペットボトルなどの「廃材」や一見不要と思われる物も、祥子さんにかかればすべて芸術作品へと生まれ変わります。 その創造性は「祥子さんの世界には無駄なものが存在しない」と称されるほどです。

木箱までアート作品に!
お母さんのお話には、祥子さんの為に1つ1つの縁を大切に繋げ、支え続ける並々ならぬ努力と愛情がにじんでいました。その姿に「自分が親だったらここまでできるだろうか」と、同じ子どもを持つ1人の親として尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。
そんなお母さんの姿勢に触れ、「微力ながらにでも何か力になれたら」、「知的障害がある方々にとってより良い社会にするため、自分にできることは何か」と考える様になりました。
ポレポレの友だち
―心がほどける場所―
祥子さんはその後、障害があるご友人とのご縁をきっかけに、「NOA絵画教室」で7年間水彩画を楽しみ、現在は「ポレポレの友だち」という造形教室でアート活動を続けています。
1995年春にスタートした「ポレポレの友だち」は、「養護学校を卒業しても、描き続けてほしい」という名古屋市内の支援学校教諭、春日井誠先生の願いから、芸大の先輩・阿部一雅先生の画塾を拠点に障害がある方の造形教室としてスタートしました。 現在は、一般社団法人ワンダーハートが運営し、障がいの有無や年齢の垣根を越えた教室として行政施設で活動しています。

ポレポレの友だちで作品を作る祥子さん
私も実際に活動に参加させていただきましたが、そこには笑顔があふれ、皆さんが心から楽しんでいる様子がとても印象に残っています。 コミュニケーションを取りながらお互いに協力し合い、自然と笑い声が響く、開放的な空間が広がっていました。 祥子さんもその場で、2時間以上ぶっ通しでクレヨンと絵具を力強く使い数々の作品を描いていました。その姿はまさに「アーティスト」そのものでした。 一方で、扉の上に貼られた小さなシールに目を奪われ、シール剥がしに夢中な祥子さんを大人3人で支える場面もありました。彼女の持つ集中力と行動力には圧倒されると同時に、その個性を受けとめ、支えるご家族や周囲の方々の存在の大きさを感じました。
ポレポレの友だちでの制作風景
想い合うからこそ見えた、
それぞれの道
祥子さんの弟さんにもお話を伺いました。
弟さんは大学進学の際、お母さんから「自分の人生は自分の為に好きなように生きてほしい。自閉症の姉がいるから、自分の人生を我慢したと思ってほしくない。」との考えもあり、当初は福祉とは無縁の大学で経済学を学び始めました。 しかし、一般教養の講義で自閉症について学ぶ機会があり、 「福祉の道こそ自分自身が本当に興味のあることではないか」と気づきます。 そこで思い切って介護の大学へ編入し、現在は介護士として多くの方を支える存在としてご活躍されています。
自分の道を自分で決めて邁進している弟さんは本当に立派で、家族がお互いを想い合う姿には自然と胸を打たれました。 ご苦労も多かったはずですが、臼井さんご一家の温かさと前向きな姿勢には深く感銘を受けました。そうさせているのもお母さんの頑張りや気持ちがご家族に伝わっているからだと思います。

祥子さんのお母さんと弟さん
知っておきたい、
自閉スペクトラム症のこと
今回の取り組みを通じて、改めて自閉症について学ぶ機会になりました。 自閉スペクトラム症(ASD)の行動特性は、社会性、コミュニケーション、 そして行動パターンに特徴が見られます。 具体的には、対人関係の困難さ、言葉の遅れや独特な使い方、特定の物事への強いこだわりや反復行動などが挙げられます。 祥子さんの作品づくりへの集中力や、小さな対象物へのこだわりもその一例です。
最後に
今回、臼井祥子さんとそのご家族、そして「ポレポレの友だち」の皆さんとの出会いは、 私たちに多くの学びを与えてくれました。そして、より一層個人としても会社としても何か力になれないか、さらには「ポレポレの友だち」の心温まる活動が継続できるようにビジネスで貢献できないか、色々と模索するようになりました。
次回のブログでは、その一環として臼井祥子さんとのコラボレーション商品をご紹介いたします。 アートとアパレルの融合を通じ、誰かの背中をそっと押すような価値あるプロジェクトになるよう、私たちも引き続き取り組んでまいります。
次回もお楽しみに!
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