一色ずつ、心を重ねて。
色彩から広がるアートと未来

ーわたしたちのサステナブルー

この度、ヤマダヤでは「わたしたちのサステナブル」プロジェクトとして、アール・ブリュット作家・らいむさんとのコラボレーションアイテムを販売いたします。
本記事では、らいむさんとご家族との出会いを通して感じた想いや、作品に込められた自由な感性、そして創作に向き合う日々をご紹介します。らいむさんが描く色彩豊かな作品の魅力に触れながら、一人のアーティストとして紡ぐ表現の世界をお楽しみいただければ幸いです。

作家紹介:らいむ(Ryme)

7歳の頃、公園で遊んでいる際に原因不明の事故で突然倒れ、心身に大きな障害を負いました。その後、アートと出会い、現在は表現活動を通して社会とのつながりを広げています。
既成概念にとらわれない自由な線と豊かな色彩は、らいむさんの作品ならではの魅力です。やさしさと力強さが共存する表現は、見る人の心を自然と惹きつけ、深い印象を残します。言葉だけでは表現しきれない感情や感覚をアートとして描き続け、その作品は「障害」という枠を超え、一人の表現者として高く評価されています。
「生きているだけで素晴らしい」というメッセージを、作品と存在そのもので伝え続けるアーティストです。

らいむさん

アール・ブリュット作家 らいむさん

アールブリュット作家らいむが描くまで

18歳のアールブリュット作家、らいむさん。その創作の歴史は、実はまだとても浅いものです。7歳のときに脳に大きな傷を負い、車椅子と共に生きる日々の中で、絵を本格的に描き始めたのはわずか1、2年のことだといいます。
転機となったのは、学校の授業参観での出来事。美術の授業で夢中になって作品づくりに取り組むらいむさんの姿を見たお母様は、その楽しそうな表情がとても印象に残ったといいます。陶芸や絵画など、学校から持ち帰る作品には、自由で豊かな色彩感覚があふれており、その才能に心を動かされたお母様は、「家でも描いてみよう」と声をかけました。

パレットの上の対話

らいむさんの制作は、お母様が絵の具のパレットを見せるところから始まります。「上の段と下の段、どっちがいい?」と問いかけ、らいむさんは視線や表情で答えます。次に「1番、2番、3番……」と一色ずつ色を確認し、選ばれた色をお母様がスポンジに取ります。キャンバスの位置を示しながら手を添えると、らいむさんは自らの意思でスポンジを動かし、色を重ねていきます。
筆のような細い道具を安定して持つことが難しいため、制作にはスポンジを使用しています。この方法は、学校の美術教諭と相談を重ねながら、試行錯誤の末にたどり着いたものだそうです。一色を選び、色を置き、また次の一色を選ぶ。その繰り返しによって、少しずつ作品が形になっていきます。

らいむさんの制作風景を説明するお母様


制作に向き合う時間も、その日の気持ちを何より大切にしています。学校やリハビリで平日から土曜日まで予定が詰まっているため、ゆっくり絵を描けるのは日曜と祝日が中心。それでも、「今日は描きたい」という意思が伝わると、お母様はすぐに画材を用意します。
作品に使われる色にも、らいむさんの成長が映し出されています。以前は赤を中心とした鮮やかな色彩を好んでいましたが、高校生になってからは、深みのある落ち着いた色を選ぶことが増えました。普段使う車椅子も、かつての鮮やかな赤から深いグリーンへ。「大人になったのかな、と感じました」と、お母様は穏やかな表情で語ります。
らいむさんが選ぶ一色一色には、その日の気持ちや感性が映し出されています。母子で紡ぐ制作の時間は、作品を完成させるためだけではなく、らいむさんらしさを丁寧に形にしていく、かけがえのない時間となっています。

文字にのせるメッセージ

らいむさんの創作活動には、絵だけでなく文字を書く時間もあります。こちらも本人の気分に委ねられていて、「今日は書きたいメッセージがある」と伝えてきたときだけ、スケッチブックにペンを持ち、いきなり書き始めるといいます。七夕の短冊に最初に綴る言葉は、いつも自分の願いごとではなく「みんな幸せ」。ご飯が食べたい、仕事をしたい、社長になりたいという思いも、何年も前から繰り返し文字にしてきました。
学校の先生たちの関わりも創作の土台になっています。当初は「正解」を求めすぎて、自信のある答えしか出せなかったというらいむさんに対し、先生たちは「間違えていいんだよ」「好きなようにやっていい」と繰り返し伝え続けました。その積み重ねが、色を自由に選び、抽象的な表現に踏み出す土壌になったといいます。

らいむさん

らいむさんが七夕の短冊に最初に書く願いごと

世界へ広がる一点もの

この1年ほどで、らいむさんの作品は大きく活動の場を広げています。
名古屋で開催された講演会では、知的障害のある子どもを育てるエレクトーン奏者とのコラボレーションが実現。これまでらいむさんが綴ってきた言葉をつなぎ合わせて一つの歌詞にし、音楽作品として発表されました。作詞者として「らいむ(Ryme)」の名前がクレジットされたことは、お母様にとっても忘れられない出来事だったといいます。
さらに、今年の秋には新たな挑戦が控えています。京都を拠点に活動し、着物の打掛や著名アーティストの衣装制作を手がけるデザイナーとのコラボレーションが決定。らいむさんの作品を取り入れたアート作品が、ヨーロッパの美術館で展示される予定です。布地に直接描き上げるため、完成する作品は世界に一つだけ。それぞれが唯一無二の表情を持ち、原画ならではの力強さや色彩をそのまま感じられる特別な作品となります。らいむさんの自由な感性が、国境を越えて多くの人々の心に届こうとしています。
現在、お母様は創作活動を長く続けられるよう、ヘルパーなど周囲のサポートを受けながら制作できる環境づくりにも取り組んでいます。将来的には法人化も視野に入れ、アートを仕事として育てながら、らいむさんが自分らしく表現を続けられる未来を目指しています。

色鮮やかな作品たちと、らいむさんが使用する絵の具

支援学校卒業後の活動

らいむさんは支援学校を卒業後、生活介護事業所の利用を予定しています。しかし、生活介護事業所では支援学校に比べて創作活動に充てられる時間が限られることや、制作した作品を継続的に発信・販売するための環境が十分に整っていないなど、制度や運用面にはまだ多くの課題があります。
また、らいむさんの障害は社会的な認知や支援に関する情報が十分とは言えず、参考となる事例も多くありません。そのため、ご家族は試行錯誤を重ねながら、一つ一つ道を切り拓いています。
それでも、らいむさんが描く作品は、人の心を動かし、社会との新たなつながりを生み出しています。障害の種類や程度にかかわらず、一人ひとりの個性や表現が尊重され、それぞれの力を生かしながら挑戦できる社会であってほしい――。そんな願いが、この活動には込められています。

「特別な人」で終わらせないために

「アートの世界で1%に入ることも簡単ではない」とお母様は冷静に語る一方で、らいむさんの創作活動を、同じように重い身体障害を持ちながら働きたいと願う人たちの希望にしたいという思いを繰り返し口にされていました。「見た目でわかりやすいぶん身構えられてしまうけれど、私からすれば数学が苦手というのと同じような、ただの個性」。そう語るお母様の言葉には、社会に対する願いが込められています。一色を選び、一筆を置く。その繰り返しの先に、らいむさんは自分の言葉と色で、少しずつ世界とつながる道を描き続けています。

らいむさんとお母様

らいむさんとお母様

最後に

らいむさんの自分らしく表現する姿勢は、多くの人の心にまっすぐ届き、見るたびに新たな発見や温もりを与えてくれます。今回のコラボレーションでは、そんならいむさんの作品をスカーフに落とし込みました。日々の暮らしに寄り添うアイテムとして手に取っていただくことで、らいむさんが描く唯一無二の世界観を、より身近に楽しんでいただければ幸いです。
ヤマダヤは、「わたしたちのサステナブル」プロジェクトを通じて、一人ひとりの個性や創造性が持つ価値をこれからも大切にしていきます。らいむさんが紡ぐ豊かな色彩と表現が、皆さまの日常に新たな彩りを添え、この出会いが長く愛されるものとなることを願っています。

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